リタイア世代は「日本の大災害」をどのように後世に伝えればいいのか?

2016.08.31
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選ばれた全国の高校生が約3ヶ月間にわたり各地の名人を訪問し、聞き書きをする壮大なイベント「聞き書き甲子園」については前回紹介しました。シニアライフアドバイザーの松本すみ子さんは、前回に続き、震災の体験を伝える「聴き書き活動」について紹介します。ご自身もメンバーのひとりとして聴き書きの会「ききがきすと」というNPO法人の活動をおこなっているそうです。一体どんな活動なのでしょうか?

今のうちに聴いておかなければ

前回は、普段の聴き書き活動が世代間交流やシニアの活動づくり、地域のお宝発掘に役立つことを紹介しました。さらに、この手法の優れた点は、歴史的出来事や災害時の体験を記録して伝える役割ができるということです。

大きな災害といえば、最近では熊本地震、まだまだ記憶に新しいところでは東日本大震災と阪神・淡路大震災がありました。それ以外にも、日本中のあちこちで災害や事故は頻繁に起きています。また、忘れてならないのは、先の大戦と広島・長崎への原爆投下です。

広島や長崎では、戦後70年を過ぎ、被爆者の高齢化で、体験や思いをどう継承していくかが大きな問題になっていると聞きました。その役割を引き継げるのは、まず被爆2世・3世の方々でしょう。

実際の聴き書きの様子

彼らが祖父母や両親から話を聞いてまとめることができたら、貴重な記録がたくさん残るはずです。また、市民やボランティアなどが率先して聴き取り活動をすることで、たくさんの資料が残せます。

しかし、それができるのも今のうちです今のうちに聴いておかないと、伝えるべきことを持った方々がどんどんいなくなっていきます。あんなつらいことは忘れたいと語らずに来た人たちも、最近は、やはり伝えておかなければならないと考え直しているとか。そうした人たちの受け皿として「聴き書き活動」が役に立つのです。

シニアがまとめた東日本大震災の記録

災害も同じです。阪神・淡路大震災から21年、東日本大震災から5年が経ち、徐々に人々の記憶や関心が薄れています。しかし、記録しておくことは重要と、被災地を訪問し、被災者の方々の話を冊子にまとめたグループがあります。それはNPO法人シニアわーくすRyoma21の聴き書きの会ききがきすと」。実は、私もメンバーのひとりです。

聴き書き活動で出版した作品

このグループはそれまでも、高齢な親の話を聴いてまとめておきたいという家族からの依頼を受けて、その話を冊子にまとめるという有料の活動を行ってきました。

しかし、3.11が起きたときにメンバーが思ったのは、被災者の体験と思いを記録して広く伝えることが、聴き書きを行っている自分たちのやるべきことではないかということでした。また、心にたまったものを吐き出していただくことで、被災者の方々の心の支援にもなるのではないかと。

津波が押し寄せ変わり果てた田老のホテル

そこで、2012年冬、メンバーは伝手をたどって、宮城県仙台市と多賀城市を訪問し、被災者の方々から聴き取りを行いました。

それをもとに『あの日をわすれない 東日本大震災を語る・宮城編』にまとめました。次いで、2014年夏には岩手県宮古市田老地区で活動し、岩手編を刊行しました。この活動はボランティアなので、冊子を1冊1,500円(送料180円)で販売し、活動資金にしています。

被災者の生々しい言葉

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・地震の時、福島原発から4㎞ほどの双葉町で働いていた青年の故郷に寄せる思い

・生後2か月半の赤ちゃんを必死で逃げた若いお母さんとその家族の奮闘

・震災で一度は倒産した居酒屋を有志の熱意でNPOとして復活させた人たちの努力

・押し寄せる津波を撮影したビデオを一般公開しているホテルオーナーの後悔

・足が悪かったがゆえにいち早く非難して助かった80歳の女性の恐怖

・自宅ごと田老湾をぐるぐると漂流した末に助かった男性の危機一髪

これは宮城編や岩手編に掲載されている体験の一部です。彼ら自身の言葉で綴られているだけに、当時の記憶が一層生々しく蘇ります。

田老の仮設商店街「たろちゃんハウス」

この聴き書きグループは、今後も福島など各地の被災地、広島や長崎での聴き取りを続けていくつもりです。しかし、自前の活動費だけでは、思ったように動けないのが悩み。とはいえ、こうした活動は一時的に盛り上がって終わりということでないので、じっくり取り組んでいきたいと考えています。

大事なのは活動を継続していくことです。そこで、「ききがきすと養成講座」を開催して、このような活動に関心のある人たちにスキルを伝えることも行っています。継承者を育てることは欠かせません。伝えたい事を持っている人がいて、それを聴いてまとめることが喜びの人たちもいる。その橋渡しも大事なことなのです。

会では聴き書きの依頼だけでなく、聴き書き講座を開催したいという依頼も受け付けています。

 

NPO法人シニアわーくすRyoma21「ききがきすと」グループのページ 

 

松本すみ子
シニアライフアドバイザー。2000年から団塊・シニア世代のライフスタイルや動向を調査し、発信中。全国各地の自治体で「地域デビュー講座」の講師なども務める日々。当事者目線を重視しています。 http://www.arias.co.jp/

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1 Comment
  1. 旅がらす輩

    大震災には遭遇していませんが、先の大戦で阪神大空襲で酷い目に遭いました。街中では防空壕なども無く地下下水道に逃げ込みました。地上は大火災で阿鼻叫喚の地獄図でした。一難去って這い出ると辺りは一変、焼け野原となって居りました。生き残った人々は方向感覚を失って彷徨うばかりでしたね。

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