坂本龍馬も登った、天孫降臨の地として知られる「高千穂峰」へ

2017.10.11
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古くから神様の聖地が点在する場所と言われる「霧島連山」。中でも、ニギノミコトが頂上に降り立った「天孫降臨伝説」の伝承の地として古くから伝わる「高千穂峰(たかちほのみね)」はパワースポットとしても名高く、多くの人に愛される山です。今回、現地へ訪れ、神秘に満ちた高千穂峰の歴史を探りました。

 

歴史とロマンあふれる「高千穂峰」

ピンクの花がミヤマキリシマ ©高津穂町観光協会

九州や西日本には「古事記」にゆかりのある地が多く残り、特に南九州の鹿児島や宮崎には「古事記」の中でも“神話の部分”にまつわる物語が多く伝わります。宮崎県と鹿児島県の県境に広がる霧島連山はそんな神様の聖地が点在する場所。歴史ファンはもちろんのことパワースポットとしても人気を集めていますが、数多ある聖地の中でも最高峰となるとやはり「高千穂峰」と言えるのではないでしょうか。

 

天照大神の命を受けて孫であるニニギノミコトが地上へと降臨し地上界を治めることになった、いわゆる「天孫降臨伝説」の伝承の地として古代より伝わる場所です(場所については諸説あり、同じく宮崎県の「高千穂峡」という一説もありますが、「高千穂峰」説のほうが強いらしいです)。

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「高千穂峰」は、今もなお活動を続ける霧島連峰の第二峰。四季折々の自然豊かな霧島にあり、春には若葉がきらめく新緑、初夏にはこの地方の固有種であるミヤマキリシマ、秋には燃えるような紅葉、そして冬には一面を銀色の世界に覆われた樹氷など、一年を通じて自然がつくりだす美しい景観に彩られる山です。

 

第二峰といっても標高にして1,574m。さほど高いわけではなく、ここまで来たのだからせっかくなので「高千穂峰」に登ってみようかと思いついたのは、霧島温泉を訪れた際、旅館で朝ごはんを食べていたときのことでした。

 

夏の終わりの霧島はまだまだ空に入道雲が広がり、その日の予想最高気温はゆうに30度越えの晴天日。市街観光より標高の高い霧島連山散策のほうが気持ちよさそうと、とりあえず身支度を整えて目指すは登山道の入り口となる「ビジターセンター」へ。身支度を整えると言っても、そもそも山登りなど予定になかったので、持ってきている服の中で一番動きやすく汗をかいてもOKなものを選び、帽子や布でとりあえずの日焼け対策。足元はスニーカーで挑みました。

 

予備用にペットボトルの水を1本購入し、さっそく出発。まずは、「天孫降臨伝説」の地である霧島神宮の古宮址へ。高千穂峰を背景にそびえる大きな鳥居をくぐるとその先にスペースが広がります。

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ここが伝説のニニギノミコトが天より降り立った地であり、もともと霧島神宮が建てられた場所なのです。古代より度重なる噴火によりみまわれ、1235年の大噴火で焼失。その後、霧島神宮は現在の場所へと移されたのですが、今でもあたりは厳かな雰囲気に包まれ、特別な何かが宿る場所だとうことを訪れる人々に無言で告げています。

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この地に宿るパワーと神様にきちんとご挨拶し、高千穂へと入山。いよいよ本格的な山登りコースのはじまりとなります。

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高千穂峰への登山道は緑が生い茂る木立をぬう山道で、勾配もそう急でなく、目に入る植物を観察したり美しく舞う蝶々に見とれたり、なかなか快適なコース。時々行き交う方々がみな本格的な山登り装備というのに比べて自分たちの軽装がちょっと気になりますが、このくらいの山道ならまあ大したことはないと、この時点では思っていたのです。少しずつ坂が急になってきても日頃足腰にはあまり不安を感じないので、なんら気にせず登っていったのですが、半分以上行ったあたりで、突然景色が一転しました。

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これまでずっと確かに続いてきた山道がある地点から先スッパリと途切れているのです。歩く地面はあるんですが、道がない。道の代わりに目の前に現れたのは単なる山肌のような地面。それもかなりの急勾配で殺伐と乾き切っている様子です。つまり、これまで歩いてきた背後を振りかえると木々が生い茂げ、そこには確かに道があるのですが、ある地点から先は空に向かって荒野だけが広がっているということ。文字通り天に向かってハゲ山が続くと言ったらよいでしょうか。

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中腹から先、山頂にかけては火山活動で木々が焼け焦げてしまったということを、私はこのとき初めて理解しました。あとから知ったことですが、この斜面は新燃岳の噴火により火山礫等が堆積したものなんだそう。これまで登ったことがある山は山頂部分にもちゃんと木が生えていた山ばかりだったので、これはかなりの衝撃です。登山経験豊富な人や富士山に登ったことがある人なら、ハゲ山もそんなの当たり前の光景と思うのでしょうが。

 

そして、ここに来て初めて行き交う人々の装備の意味をも理解したのです。というのも、急に足場が一転。これまでの土の道とは異なり、明らかに違った成分の物体が地面を形成しているのがわかりました。溶岩が固まったゴツゴツとした岩肌がずっと続くだけならまだしも、軽石が砕けたみたいな粒の大きな砂利が無数に転がり、とにかく滑ります。しかもここから先はかなりの急勾配。みなさんがちゃんとした登山靴を履き、ストックを持ち、軍手をしている理由がよーくわかったのです。

 

確かに、普通の装備ではちょっとキツイ。普通のスニーカーではズルズルと滑りまくりで危ないし、その上靴の中に砂が入ってくるのでとっても気持ち悪いのです。事前に何も調べずノリでここまで来てしまったことを後悔。と言ってもすでに山頂が見えるここまで来て今さら引きかえすという選択もなく、とにかく意を決してゴールを目指すことに。標高1500m越えの山とはいえ、これは本格的な山登り以外の何ものでもないということにようやく気付いた次第です。

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一応、何かのときのためと思い水はじゅうぶんに持っていましたが、これはまったくの想定外。こんなハゲ山の景色にお目にかかるつもりは一ミリもなかったのです。木が一本も生えていないので、頭上から照りつける太陽や吹き付ける風を遮るものはひとつもなく、状況としてはかなり過酷です。日陰がない山での真夏の登山の過酷さを思い知りました。おそらくこの時点で標高は地上から1000m以上だと思うのですが、つかむべきものが何もないという状況。

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振り向くと下界が大パノラマで広がっています。これを見晴らしがよい景色と呼ぶ人もいると思うのですが、高所恐怖症の私にとっては怖い以外のなにものでもありません。急な突風に吹かれ足を滑らせようものなら、岩肌をはるか下界に向けて転がり落ちることは明白です。景色を楽しむ人々の姿を横目にまわりの景色を見ると頭がくらくらするので、ひたすら目の前の岩肌だけを見て登ることに集中。振り返ったら足がすくんで動けなくなってしまうのでけっして振り返ってはいけないと自分を言い聞かせ、半分泣きそうな気分になりながら黙々と足を動かします。

 

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そんな恐怖体験をしてようやく辿り着いたのが直径600mもあるお鉢と呼ばれる火山口。このお鉢からマグマが吹き上がっていたのが嘘のように現在は静かに沈黙しています。

 

これは、確かにこれはここまで登ってこないと見ることができない大迫力の風景で、“雄大な”とか“雄々しい”などの表現がピッタリとはまります。山登りに魅せられた人はこの天空に広がる山の美しさを求めて登るのかもしれない。そんなことを思いながらド迫力のお鉢を眺めました。そして、そのままお鉢に沿ってハゲ山の稜線を歩いて行くと「天の逆鉾」が祀られる山頂へと到着するのです。

天の逆鉾

坂本龍馬とお龍が新婚旅行で高千穂峰に登り、龍馬がこの「天の逆鉾 」を引き抜いた話は有名ですね。龍馬たちが訪れたのは初夏のミヤマキリシマが美しく咲き乱れるシーズンで、一面をピンク色のじゅうたんに染めた高千穂の風景の美しさを姉の乙女に宛てた手紙の中で綴っているそうです。坂本龍馬とお龍のふたりが立った同じ場所に立ち、同じ景色を眺めていると想像するのはなかなかロマンにあふれます。

龍馬公園 

 

 

山頂から眺める風景の美しさだけでなく、雄大なお鉢の風景といい、この「天の逆鉾」といい、龍馬たちの痕跡といい、こんな思いをしてここまで登ってきた甲斐があるルートと言えるのではないか、と一応納得。なんとなく、すごくよい気のパワーで全身を浄化させてもらったようなそんな気分になりました。

 

どこからどの角度で眺めても美しいとして登山家はもちろん多くの人に愛される「高千穂峰」。今回はたまたま登ってきましたが、冷静に考えてみるとやはり一生のうち一度は登ってみたい山と言えるかもしれません。無事に下山したら近隣には温泉好きにはたまらない個性派の湯があふれる温泉が点在するので、神々へ感謝しながら一汗流すというお楽しみも忘れずに。

次回は、ぜひミヤマキリシマが咲く初夏に訪れてみたいと思いました。もちろん、そのときはちゃんと登山靴を履き、それなりの装備を整えて!

 

参考サイト:高原町観光協会

 

小林繭
東京生まれ、湘南生息中のフリー編集ライター。沖縄、ハワイ、島、旅モノやロハスネタを発信中。All About沖縄ガイド。目下、踊れる編集ライター目指し趣味のフラメンコに取り組む日々。

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