竹下通りができる前、若者が知らない「原宿」の歴史【東京地名散歩】

いまや国内からのみに留まらず、海外からもたくさんの旅行客で毎日にぎわいを見せる街「原宿」。東京の若者カルチャーを代表する都市といった現代的なイメージがエリアですが、実は古い歴史の爪痕が残る場所でもありました。

今回は、都内最古の木造駅舎「原宿駅」からスタートし、江戸時代の原宿村、そして地元の人々愛され続ける現代の原宿まで、ディープな歴史に迫ります。いつも何気なく歩いている街の印象が全く変わってきますよ。

※本記事は現段階でのお出かけを推奨するものではありません。新型コロナウィルスの国内情報および各施設などの公式発表をご確認ください。

昔の原宿と今の原宿

英国風木造駅舎のあたたかなフォルムが原宿駅の特徴
英国風木造駅舎のあたたかなフォルムが原宿駅の特徴

原宿には毎日たくさんの観光客が、世界中からやってきます。その傾向は1964(昭和39)年の東京オリンピックの開催以後、顕著になってきました。当初は日本人の若者たちを中心に、いまに続くにぎわいの芽が生まれました。

1970年代半ばに「竹下通り」が誕生するとにぎわいは急速に増し、1980〜90年代あたりからは原宿駅周辺が毎日、お祭り騒ぎのような活気をみせるようになります。それにつれて原宿を訪れる人々の国際色も、より豊かになっていきました。

年末年始の初詣シーズンだけ使われる原宿駅臨時改札口

いまも変わらず人通りの多い竹下通りや表参道、さらに原宿駅の反対側に足を延ばしてみましょう。代々木公園や明治神宮周辺を歩けば、原宿界隈がいかに多種多様な国の人々に注目され、世代を超え愛されているかということが、肌で実感できます。

しかし、そうした現代の原宿界隈の様子は、あくまでもここ半世紀ちょっとの間に現出してきた傾向といえます。

1964年の東京オリンピック以前の原宿界隈(とくに表参道の周辺)は、どちらかといえば静かで、大人っぽい雰囲気の地域でした。そして当時はまだ、間に表参道を挟んで北側(渋谷区神宮前3~4丁目)と南側(神宮前5~6丁目)に繋がる、現在の「キャットストリート(渋谷川遊歩道)」は、存在すらしていませんでした。

暗きょ化(1964年東京オリンピック開催の直前)される以前の渋谷川が、まだちゃんと地表を流れており、例えば隠田商店街(南側のキャットストリート沿いに展開する商店街)は、主に地域住民向けの素朴な商店街だったのです。

外国人の姿は、実は1964年東京オリンピック以前のほうが、別の意味で目立っていました。


現在の代々木公園(1967年=昭和42年オープン)とNHK放送センターなどを含む広大な地域一帯には、ワシントンハイツ(第2次大戦後に日本を占領した進駐軍=GHQ=連合国軍最高司令官司令部=のうち、アメリカ軍人やその家族向けに造られた宿舎などのある軍用地。戦前は日本陸軍の練兵場)が設けられていたからです。

進駐軍の占領(1945=昭和20年~1952=昭和27年)が終わった後も、ワシントンハイツはそのまま米軍所管のまま推移し、東京オリンピックを3年後に控えた1961(昭和36)年にようやく、土地がすべて日本に正式返還されます(米軍人家族が暮らす《米軍ハウス》は1963年ごろまで残っていたようです)。

1960年代初頭までの表参道には、ワシントンハイツで本国同様の暮らしをしているアメリカ人たちが、現在よりもかなり人通りの少ない、また欧米ふうの落ち着いた、ゆったりした街並みを、家族連れでのんびり歩く姿が日常的に見られました。その様子は各種の写真資料などにも残されています。

Washington_Heights_in_Tokyo
1947年当時のワシントンハイツの様子image by:Wikipedia commons

当時の表参道には、アメリカ人向けに造られた、日本離れした造りのお店が建ち並んでいました。

例えばいまは全国でチェーン展開されているトイショップ「キデイランド」も、もともとはワシントンハイツで暮らすアメリカ人向けに1950(昭和25)年に開店した、書店兼雑貨店(最初の屋号は橋立書店)だったのです。

さらに原宿界隈には、もっともっと以前、江戸時代よりもはるか昔から続いてきた、原宿ならではの深くてユニークな歴史が伝えられています。

今回の東京地名散歩は時空を超え伝えられてきた、そんな原宿界隈の歴史・文化の痕跡を、地名を訪ねながら探ってみました。

※ここでいう原宿界隈とは、1965(昭和40)年まで住居表示として使われた旧渋谷区原宿1~3丁目を中心に、隣接する旧隠田(おんでん)地区なども加えた周辺地域を指します。

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