落語家・柳家喬太郎がホッとする、地元「祖師ヶ谷大蔵」の魅力

2017.02.16
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柳家喬太郎さんが初主演する映画『スプリング、ハズ、カム』が2月18日より公開されます。石井杏奈さん扮する、春から大学に進学する娘の父親役を演じています。映画の舞台は、小田急線の祖師ヶ谷大蔵ですが、偶然にもここは喬太郎さんのジモト。今回、映画の話を交えながら、生まれ育った祖師ヶ谷大蔵というに街について、『ジモトのココロ』が柳家喬太郎さんにお話を伺いしました。

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生れ育った祖師ヶ谷大蔵が映画の舞台

──師匠が初主演された映画『スプリング、ハズ、カム』は春から大学に進む娘とその父親が東京で部屋探しをする、たった一日を描いた作品です。舞台は師匠の“ジモト”である小田急線の祖師ヶ谷大蔵。商店街やお店などいろんな地元スポットも描かれて、後半は“ご町内ロードムービー”になっていきます。生まれ育ったエリアで撮影されて、どんな心持ちでしたか?

柳家喬太郎師匠(以下、喬太郎):最初は「ん? 祖師ヶ谷大蔵だから俺に話がきたのか?」と勘ぐったりしたんですけど、まったく偶然だったみたいで(笑)。やっぱりご縁みたいなものを感じましたね。ただ、今回この撮影で久しぶりに地元を訪ねたんですけど、僕が暮らしてた頃とはずいぶん様変わりしてたなぁ。駅前もすっかりきれいになってたし、ロケをした「祖師谷公園なんて平成になって造られた場所らしいですしね。

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落語界の鬼才、柳家喬太郎が53歳にして遂に映画初主演。共演はE-girlsの石井杏奈さん。

──少年時代の記憶そのままではなかったと。

喬太郎:ええ。もともと僕が生まれ育ったのは大蔵団地」という場所で。小田急線の線路をはさんで南側、世田谷通り方向だったんです。でも、この映画のロケ地はそれとは逆サイド、北側の祖師谷エリアが多かったですからね。子供時代の縄張りじゃなかった(笑)。

ただ、親に話してやれるのはちょっとよかったかなと思いましたね。「今度俺が出る映画さ、祖師谷が舞台なんだよ」「あら、楽しみじゃない」なんて、親子で話せるのは楽しいなあって。

──師匠が子供の頃の祖師ヶ谷大蔵は、どんな街でしたか?

喬太郎:今もそうなんでしょうけど、本当になんの変哲もないよくある私鉄沿線の街でしたよ。世田谷っていうと、ほら、なんとなくハイソなイメージがあるじゃないですか。実際、高級住宅地の成城学園前まで自転車で行けちゃう距離ですし。

でも電車でたった一駅しか違わないのに、祖師ヶ谷大蔵で降りると雰囲気ががらっと変わる(笑)。いきなり庶民的な空気が漂うんです。

しかも面白いのは、台東区や荒川区みたいな“江戸っ子的下町”とも違うんだよね。これといって特徴がないのが特徴といいますか…。ごく普通の人々が、本当に普通に生活を営んでる街。そんなイメージですね。

東京の小田急線の祖師ヶ谷大蔵駅前広場にそびえ立つウルトラマン像。かつて円谷プロダクションがあった地区で、ウルトラマン発祥の地として知られている。

──その頃は駅前広場のウルトラマン像もまだなかった?

喬太郎:ないです、ないです。影もかたちもなかった。ここだけの話、「今ごろになって『ウルトラマン商店街』とか言いだしちゃって、遅いんだよ!」って気持ちも、ちょっぴりなくはない(笑)。まあ、僕はウルトラマン支持者なんで、それでも嬉しかったりするんですけどね。

──ウルトラマンは少年時代からお好きだったんですか?

喬太郎:ええ、もちろん! 最初にお話ししたように、僕は大蔵団地生まれの大蔵団地育ちだったので。実家のすぐ近くに砧の「東宝撮影所」や円谷プロがあったんです。友だちのお父さんがゴジラ・シリーズの映画に関わっていて、みんなで『ゴジラ対へドラ』(1971)の現場見学に行かせてもらったり。あと、円谷プロには時々遊びに行った記憶があります。

当時、「チビラくん」という15分の特撮番組があったんです(1971〜72年、日本テレビ系)。数多い円谷プロ作品のなかでも、とびきりマイナーなシリーズなんですけど。その主人公が住んでいるのが、真四角のサイコロ型に丸い窓がたくさん付いた、ヘンな建物でね。この実物も近所にありました。僕ら、毎日それを見て「あ、チビラの家だ」と思いながら、砧小学校に通ってましたもん(笑)。

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──師匠は20年ほど前から「ウルトラマン落語」を高座にかけておられますね。昨年は初の円谷プロダクション公認イベント『ウルトラマンの日 in 杉並公会堂』も開かれました。これもまた、どこかで大蔵団地時代の記憶と繋がっているのでしょうか?

喬太郎:うん。間違いなくそうだと思います!

祖師ヶ谷大蔵で話題のたこ焼き屋「たこっぺ」

祖師ヶ谷大蔵で話題のたこ焼き屋「たこっぺ」

 

──ちなみに今回、久々に祖師ヶ谷大蔵駅を再訪されて、「かつての行きつけで今もまだ残っていたお店」は発見できたましたか?

喬太郎:大学時代、落研の連中とたまに行ってたチェリオ」という店がまだ営業してました。見た目は昔っぽい喫茶店なんですけど、一応“ピザハウス”というか、ピザが売りのお店でしてね。

一人用の小ぶりなサイズでピザを出してくれる。それがやけにお洒落に思えたりしてね(笑)。これもまたロケをした方面とは逆エリアなんですけど。懐かしくて、撮影の前と撮影中に二度ばかり行きました。それ以外にも、「この店は昔もあったな…」っていう店が二、三軒あって。それはやっぱり、うれしかったですね。

ウルトラマン商店街を歩いて5分のところにあるイタリア料理「チェリオ」。創業は1976年とのこと。

 

──久しぶりに歩いてみて、やっぱりいい街だなと思われました?

喬太郎:思いましたね。世間一般で言う高級住宅街じゃない、世田谷。ひよこは卵から孵ってはじめて見たものを母親と思うって言うけど、今でも住んだらなじめるんだろうなホッとできるんだろうなという気はしました。

──そういえば映画のなかでも、柳川慶子さんが演じるアパートの大家さんが祖師谷について「昔ながらの商店街もあって、東京一年生が暮らすにはぴったり」と話すシーンがありましたね。

喬太郎:僕も本当にその通りだと思いますよ。吉野(竜平)監督は、よくぞこの場所を選んでくださったなと(笑)。個人的にも感謝しています、はい。

 

取材・文/大谷隆之

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information

柳家喬太郎(KYOTARO YANAGIYA)

1963年、東京都出身。’89年10月に柳家さん喬に入門。’99年には新作落語「午後の保健室」で、平成10年度NHK新人演芸大賞落語部門大賞を受賞。さらに、’00年には、12人抜きで真打に昇進し、その実力を不動のものとする。以降も、国立演芸場花形演芸会大賞3年連続受賞(’05〜’07)、文化庁芸術選奨文部科学大臣新人賞(大衆演芸部問)(’06)など数々の賞に輝く。新作落語の代表作は、「純情日記横浜篇」、「ほんとのこというと」、「夜の慣用句」。俳優としては、「ちゅらさん4」「坂の上の雲」などに出演、本作では初の主演を務める。

スプリング・ハズ・カム

新宿武蔵野館/USシネマ千葉ニュータウンにて2月18日(土)より公開
渋谷ユーロスペースにて2月25日(土)より公開

2017年/日本/102分
監督・脚本・編集:吉野竜平
脚本:本田誠人(ペテカン)
出演:柳家喬太郎、石井杏奈、朴璐美、角田晃広(東京 03)、柳川慶子、石橋けい、平子祐希(アルコ&ピース)、ラサール石井、山村紅葉
製作:テトラカンパニー/メディア・トレーディング
配給:エレファントハウス
宣伝:アティカス

(C)『スプリング、ハズ、カム』製作委員会

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