酒好きにはたまらない臭さ。魔性の味覚と呼ばれる滋賀の名物『鮒鮓』

2017.05.16

日本酒とは相性抜群!

さてこの鮒鮓、地元で自家用などでは雄でも作るが、基本的には春に獲れた雌を使う。雌は卵を持っていて、これがまた旨い。その雌のニゴロブナの鱗とエラ、内蔵をていねいに取り除き、水洗いした後に、エラブタからたっぷりと塩を詰める。これを樽に隙間なく並べてさらに塩をまぶし、落としぶたをして重石を載せる。このまま2〜3か月漬け込み、樽から取り出して、残った内蔵などを徹底して取り除いて水洗いする。この内蔵などをていねいに取る作業をないがしろにすると、あの臭くも芳しい匂いにならず、ただ臭いだけになってしまうのだという。

次に、炊き上がったご飯に塩を少し混ぜて冷まし、エラブタから詰め込む。そしてまた樽に隙間なく並べながらご飯をまぶし、再び落としぶたをして重石を載せる。このまま半年ほど寝かせれば晴れて完成となる。

この手間を考えれば、なるほど値段が張るのもわかる。とはいえ、高いものだと一尾一万円以上もするから、ちょっと我が家のつまみに買っていこう、というには、なかなか勇気がいる。何しろ我が妻は下戸のクセに無類の鮒鮓好きで、酒飲みの僕と一緒に箸を伸ばすと、一日で一尾を食べ切ってしまう。

鮒鮓と相性がいいのは、なんといっても日本酒だ。よく切れる包丁で数ミリ厚に薄く切った鮒鮓をひと切れ、もったいぶって箸でつまみ上げ、鮮やかなオレンジ色の卵などをねめ回すように眺めてから、ゆっくりと噛み締める。ちょっとキシキシとした歯ごたえに続いて、甘酸っぱい味と香りが口の中にふわぁーっと広がる。

皮部分の、しこり、とした食感も後を引く。脇に添えられた、とろけた米のねっとりとした味わいも極上である。 そこへ、冷やの純米酒を流し込む。鮒鮓の匂いを酒がさらりと洗い流し、同じ米由来の芳香がいっそうふくらみを増す。

もうひと切れを口に入れ、またひと口酒を含む。ひとりでに顔がニヤついてくる。湖畔の町の郷土料理店で一人酒、などという場合、さぞ気味の悪いオッサンに見えるだろうが、鮒鮓の“魔味”の前には、なすすべもないのである。

鮒鮓は茶漬けにしてもオツなものだ。ぬく飯に三切ればかりを載せて熱い茶をかける。独特の香りがまろやかになる。鮒鮓が苦手な人にもお薦めの食べ方だが、僕はめったにやることはない。だって勿体ないじゃないの

 

(※この記事は『mine』に掲載されたものを転載しています)

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【著者プロフィール】飯塚玲児

愛知県生まれ。紀行作家、郷土料理写真家。編集部記者として月刊誌の編集に携わりながら全国各地を取材。『クチコミおでかけ旅情報』編集長、創刊50年を誇る現役最古の旅行雑誌『月刊旅行読売』の編集長を歴任したのちに退職、独立。これまで編集した雑誌や情報誌は数100冊、過去に泊まった宿は800軒余、入浴した温泉は3000湯を超える。現在、週刊メルマガ「飯塚玲児の“一湯”両断!」と、記事単位で人気作家の記事が読める「mine」が好評中。公式ブログ

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