売上No.1の郷土菓子「桔梗信玄餅」が挑む、地元山梨への恩返し

TRiP EDiTOR編集部
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2017/11/19

老舗和菓子メーカーの挑戦~進化を続ける「桔梗信玄餅」

「武田信玄とはなにも関係ございません。ただ昔から山梨県民が敬愛する武田信玄公にあやかって桔梗信玄餅』と名前を付けさせていただきました」と語るのは、「桔梗信玄餅」の生みの親、桔梗屋4代目で、相談役の中丸眞治(67歳)だ。

甲府市内の住宅街に桔梗屋本店がある。創業は今から130年ほど前、明治時代の1889年。店頭には伝統的な和菓子が並ぶ。店の奥が工場になっていて、毎日手作りしている。贈答品から普段のおやつまで、桔梗屋の和菓子は地元の人たちに愛されてきた。

山梨生まれの「桔梗信玄餅」は今や全国区の人気商品。そして今、「桔梗信玄餅」シリーズが次々と出ている。

例えば2011年発売の「桔梗信玄生プリン」(4個入り、982円)。きな粉味の和風プリンに黒蜜をかけて味わう。1日に3万個も売れる、「桔梗信玄餅に次ぐヒット商品だ。

その他にも、和洋折衷のお餅の入ったロールケーキ「桔梗信玄餅生ロール」(183円)に、黒蜜入りのアイスクリーム「桔梗信玄餅アイス」(324円)などなど。最新作は「桔梗信玄餅どら」(194円)。中にはアンコときな粉を練り込んだ餅が入っている。シリーズは客の好みや時代に合わせて数を増やし、いまでは13種類も作っている。

さらに桔梗屋は和菓子屋の枠を超えたビジネスを展開している。ヘルシーメニューで人気のイタリアンレストランを経営。「アルプスの少女ハイジ」のテーマパークに、温泉施設やホテルまで運営。さらには農業にまで進出しているのだ。

今やグループ会社は12社にも及び、従業員は全体で930人。売り上げも右肩上がりで年商93億円に達している。

美味しいこと楽しいこと美しいこと、そして健康に関連することだったら、なんにでも興味持とうと。その中に新たしい事業の目が出てくるかもしれない」と、中丸は言う。

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倒産危機からの復活劇~「桔梗信玄餅」誕生秘話

8月の山梨県甲府市。お盆の習わしに従って、中丸家でも先祖の霊を迎える「迎え火」を焚く。妻で社長の中丸輝江が、お盆にあるものを供えている。きな粉のかかったお餅だ。「子どもの頃から、お盆は安倍川餅を供えてきました」と言う。


安倍川餅といえば静岡生まれ。きな粉餅とあんころ餅の2種類を一皿に盛るのが一般的だが、山梨では昔から、きな粉をまぶした餅に黒蜜をかける。山梨を代表する土産菓子は、そんなお盆の風習がヒントになっていた。

明治の中頃に創業以来、地元で評判の和菓子屋だった桔梗屋。中丸は1949年、その4代目として生まれ、子どもの頃から和菓子づくりを手伝っていた。だが1960年代、高度経済成長が始まると、食生活が欧米化。洋菓子ブームがやってきて、和菓子は衰退し始める。

「当時、親父は景気が悪いと言っていましたが、今考えれば実は『ケーキ』が悪かった。かなり経営が苦しかった」(中丸)

売り上げは下がる一方で、年末には両親が、取引業者に支払いを伸ばしてもらうように頼む姿も。当時、高校生だった中丸は不安に襲われた。

「支払いを待ってくださいと、頭を下げる親を見たとき、子供心にこのままではまずいと思ったのを覚えています」(中丸)

中丸は受験勉強をしながら、父・幸三、母・榮とともに、どうやったら店を再建できるかを考え続けた。高校3年のときのお盆。仏壇に供えてあった安倍川餅を見た中丸は「土産菓子になるんじゃないか」と思った。さっそく両親に話をすると、「わかった、餅のことはわしに任せておけ」(父)、「黒蜜はお弁当に付いているお醤油の容器に入れたらどう?」(母)と、話が進んでいった。

こうして1968年、家族3人の想いが詰まった桔梗信玄餅を発売した。中丸は明治大学に入学し、マーケティングを専攻。卒業後、桔梗屋に入社した。そして45歳のとき、4代目社長を継いだ。

社長になった中丸は、48歳で明治大学大学院に合格。学生時代に学んだマーケティングをさらに深く研究した。その知識をもとに経営の専門書まで出版。こうした研鑽のすえに、中丸は「伝統を守るだけではなく、壊していく新しくしていくことも伝統を引き継ぐことだ」という確信を掴む。

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