減塩に糖質カット。山梨発「いちやまマート」のブレない信念

2017.06.08

なぜ健康スーパーに? 転機は身内に起きた出来事

山梨県中央市にあるいちやまマート・イッツモア玉穂店の中に本社がある。その会議室でプレゼンが始まっていた。月に1度、メーカーの担当者を招いて行われる新商品の説明会だ。

メインとなる新商品はやはり食品。カルビーの「かっぱえびせん」は、塩分50%カットの減塩タイプ。次に手に取ったのは乳酸菌入りタブレット、森永製菓の「食べるマスク」。これを食べれば、マスクをするのと似たような働きがあるというふれこみだ。いちやまマートには、こうした大手メーカーの健康を意識した商品も集まりやすいという。

「通常のスーパーと比べると、私どもの店では健康的な商品を2倍、3倍は平気で売る。そういう商品を期待するお客様が来て下さっているんです」(三科)

三科はなぜここまで健康的な食品に取り組むようになったのか。

三科の父・十三が1964年に設立した、いちやまマート。山梨一の店を目指そうと命名した。1976年、24時までの深夜営業を山梨県で1番に開始。さらに100円均一セール、パンの店内調理、郊外型店舗の出店など、いち早く導入してきた。

そんな父親の背中を見ていた三科は、大学卒業後、東京の商社に勤めたが、3年後に帰郷。父親の会社に入った。当時はどうしたら売上が上がるかばかりを考え、健康への興味はほとんどなかったという。今のように変わったきっかけは身内に起きた出来事だった。

父が55歳兄は46歳で亡くなりました人生最大のショックでした」(三科) 

父親は大腸ガン、その後を継いだ兄は膵臓ガンで若くして命を落とした。以後、三科は、ただ物を売るのではなく、食品を通じて健康的な生活を生み出そうと考えるように。そして関係のありそうな本を片っ端から読みあさり、独学で勉強した。

しかし何から始めていいか分からず、専門家にアドバイスを求めると、「全部の食品添加物を外すのは難しいから、とりあえず合成着色料からなくしたらいかがですか、と言われました。合成着色料というのは、原料が当時はタール系色素といわれ、石油からとったんです。それをまずやめよう、と」(三科)。

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合成着色料を一掃~立ちはだかる厚い壁

三科は合成着色料を使った商品の一掃を決断。しかし、食品スーパーにとってそれは簡単なことではなかった。当時、商品の仕入れ担当だった徳行店の保坂賢司店長は言う。

「合成着色料を使った商品には、人気商品や売上の大きい商品もあったので、正直言うと『大変なことをやるな』『売上減るな』と」

「現実的ではない」と、なかなか本気になって取り組まない社員たち。すると三科は驚きの行動に出た。会議室に社員を集め、「半年後に新聞広告を出すことにしました」と宣言。その内容に社員たちは衝撃を受ける。

半年後の2001年9月、実際に地元紙に掲載された広告がある。全面広告の真ん中でタール系色素完全撤廃と宣言し、さらにその下には「もしタール系色素使用の商品を見つけられた方にはいちやま商品券(壱万円分)を贈呈いたします」という一文が。

社長は本気だ」と気づいた社員たちの半年間の奔走が始まった。

売り場からは合成着色料を使った商品がはじかれ、それに代わる商品を探しては入れる作業が延々と続いた。しかし、大きな壁が立ちふさがる。

それが大手メーカー製の、合成着色料入りの魚肉ソーセージ。当時、加工食品の中で、売り上げナンバーワンを誇っていた。まだ「美味安心」は作り始めていない時代。メーカーに対し、合成着色料なしのソーセージを作ってほしいと頼み込んだが、「営業の人は『分かりました』と元気よく言ってくれましたが、実際には部長とか取締役会とか、どこかの段階で却下されていたんです」(三科)。

しかし、事態は急展開する。メーカーのいちやま担当の営業マンが社長に直訴すると、「これからの世の中必ず健康志向に向かうよ。いちやまさんの言う通りに作ってあげようじゃないか」という鶴の一声で、一地方スーパーのために合成着色料を外した魚肉ソーセージが誕生したのだ。

以後、いちやまマートには健康や安心を意識した商品が集まるようになっていく。大手メーカーまでも巻き込んだイメージ戦略はこうして確立した。

ジモトのココロ編集部
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